2007.11/01(Thu)

ドビュッシー 2つのアラベスク 

クロード=ドビュッシー Claude Debussy 1962-1918
「2つのアラベスク Deux arabesques」


ショパンが「ピアノの詩人」なら、ドビュッシーは「ピアノの画家」と言われています。
ドビュッシーは、音楽以外の芸術領域から大きく影響を受け、過去の音楽と一変して、全く新しいピアニズムを創造しました。印象主義音楽を確立した人物です。その独自性はショパンが実現した独創性に匹敵します。

最初のピアノ作品「2つのアラベスク」のうち、第1番はホ長調。3連符を多用した流麗なアルペジオ上を甘く美しい旋律が流れる手法をとり、絵画のように透明な色彩感が織り成される曲です。優雅で繊細でフランスらしい気品があります。

タイトルにあるアラベスクArabesques はアラビア風という意味で、当時パリで流行した幾何学模様や唐草模様のことです。唐草模様のように音が絡み合いつつ曲が展開します。この絵画的な絡み方は、冒頭からの左手→右手→左手、左手→右手→左手の演奏技法と、第6小節からのポリリズムの両方に見て取れそうです。(個人的な感想ですが、この曲で難しかったところはポリリズム部分を正確に演奏するところです。)

3部形式なので、最初と最後は主題の旋律を流れるように弾き、中間部はイ長調で和音をきれいに響かせながらsfの部分を静かに強く聴かせるように奏でてほしい曲です。


また、「月の光 Clair de Lune」も有名な曲で、ドビュッシー初期の秀作とされています。「ベルガマスク組曲(全4曲)」の3曲目。中間部のクライマックスの音の動きは噴水のようだと評されます。フランスの詩人ポール=ヴェルレーヌ Paul Verlaine の詩「月の光」を読むと、この詩にに影響されてつくられたとも言われる理由もうなづけます。

月の光 (訳・坂口大學)*多くの訳者によって訳されています。

お前の心はけざやかな景色のようだ、そこに
見なれぬ仮面して仮装舞踏のかえるさを、歌いさざめいて人らが行くが
彼らの心とてさして陽気ではないらしい。

誇らしい恋の歌、思いのままの世の中を、
鼻歌にうたってはいるが、
どうやら彼らとて自分たちを幸福と思ってはいないらしい
おりしも彼らの歌声は月の光に溶け、消える、

枝の小鳥を夢へといざない、
大理石の水盤に姿よく立ちあがる
噴水の滴の露を歓びの極みに悶え泣きさせる
かなしくも身にしみる月の光に溶け、消える。



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2007.11/01(Thu)

ショパン ノクターン第2番変ホ長調Op.9-2 

フレデリック=ショパン Frederic Chopin 1810-1849
ノクターン第2番変ホ長調Op.9-2



ピアノを途中でやめてしまったので、楽典をやらずにいるけど、せっかくだからちょっとずつ好きなものから書いてみます。

ピアノの詩人」と呼ばれるフレデリック=ショパン の作品の中でも、Op9-2は旋律があまりに美しいので、弾いていても陶酔できる曲です。日本では誰もが聴いたことがある曲で、有名すぎてちょっと……という人もいるけど、耳慣れしているのにそれでも聴いていて飽きない曲というのがすごい。しかも意外と平易で、ツェルニー30番が弾ければたいてい弾けるという手軽さもいいです。ロンド形式で、冒頭の変ホ長調の主題が、小節を追うにつれ装飾が加わり、何度も現れます。この繰り返される優美な旋律は、心を落ち着かせます。

この曲を弾くときにいつも気になるのが短い装飾音。いわゆる「ショパンのトリル」です。装飾音をどう弾くかで旋律の流れが変わるので大事です。どう弾くかとは、つまり主要音の拍の頭に合わせて弾くか、先取りして弾くかということですが、わたしの使っていたパデレスキ版の楽譜には「…前打音、ターン、トリル、アルペッジョなどのすべての装飾音は、古典的規範に従って演奏されるべき……つまり、装飾音の音価は、主要音符の音価から差し引かれる…」と注釈がつけられています。

だから、主要音の頭の拍と同時に弾き始めるのがよいようです。たしかにこのほうが、主要音の最初の打撃が和らげられ、左手の定型の伴奏とも合います。例えば、第5小節、第13小節は「ファソファミ」のトリルを左手の「ラレ」の和音と同時に奏します。それによって、次の主要音「ファ」が柔らかく音楽的には流れに沿って奏でられます。逆にこの小節のトリルを前倒しして弾くと、この箇所だけ鋭さが生まれ、ノクターンらしくなくなります。主題が装飾を加えながら繰り返されるこの曲では、短いトリルに気を配りたいところです。

ノクターン(夜想曲)について少し。
ノクターン Nocturne は、ラテン語で「夜の」を意味する形容詞「ノクトゥルヌス」が語源だと言われています。ノクターンと言えば、ショパンを連想しますが、もともとはイギリスの音楽家ジョン=フィールドが創作した形式で、アルペジオの伴奏に乗った単純な曲のことです。ショパンは純音楽志向が強かったため、このメロディ+分散和音という単純な構造に満足できず、新たなノクターン形式を創り上げました。形式としては、3部形式をとり、主部で優美な旋律を歌い、中間部で情熱的な旋律を取り入れるというコントラストの妙があります。

また、短調を同名長調に変えて終止する「ピカルディの3度」もショパンがよく使いました。ショパンのノクターンは全21曲に及びますが、独自性のあるノクターンの到達点は「舟歌 嬰へ長調 Op.60」だと言われます。

ところで、ピアノをはじめると出会う、曲名につく「Op」って何のことか知っていますか?
これは作品番号のことで、ギリシャ語のopusのことです。わたしはオーパスと読みますが、文字通りオーピーと読んでもよいようです。Op.1であれば「作品番号1」ということで、出版順に連番になっています。作曲順でないので注意。そういえば、Opus ONEという名前のカリフォルニア極上赤ワインがありますね。ああ飲みたい。

ちなみに、Op以外では、「KV」(ケッフェル。モーツアルトの作品整理番号)、「BWV」(ビーダブリュブイ。バッハの作品のジャンルごとの通し番号)、「Hob」(ホーボーケン。ヘンデルの作品整理番号)、WoO(ベートーヴェンの作品整理番号)などがあります。

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